2011年3月22日に、mixiに書いた小説みたいな日記。
この頃は、カナダのバンクーバーにいた。
今読んでみると、読みにくすぎな事にワロタ。文章を書くって難しいね。
大学生活が終わる事について触れています。
伊坂幸太郎の本に出てくる人が現れます。
あと、THE BACK HORN・伊坂幸太郎・上原浩治と、3人の物語ばい。
時間があるときに読んでください。
THE BACK HORN
「どんな服を来ていく?」
と昼飯中に、ユーゴは聞いてきた。
彼らは、ノーボという食堂で定食を食べていた。
ユーゴ、陣内、野尻駿、添田、ドルジ平岡の5人だ。
明日は大学の卒業式で、どんな格好をしていくか思案中であった。
「でもよ。本当、大学生活終わっちまうぜ。」と陣内が答える。
「おいおい俺の質問は無視かよ。服どうすんの?スーツ?」とユーゴは口をはさんだ。
食堂の外では、お面を被ったバンドがなにやら楽しげに笑っている。
「まあ確かに大学生活終わっちまうな。もうみんな家を出ていっているしな。」と隣の野尻駿が鼻をほじりながら答える。
食堂には、彼ら以外にも学生が他に数人いる。
「なんなんだろうな。大学2年生の頃は、大学4年になることを想像すら出来なかった。」と陣内は答える。
「それ、前に変な質問をしてきたやつだろ?」とユーゴは答える。
「そうだよ。それだよ。」と陣内は嬉しそうに答える。
覚えていてくれた事が、おそらく嬉しかったのだろう。
「俺はさ、大学生活で一番考えたことはなにか?と聞かれたら、」
「まあそんな事誰も聞かねえけどな」と間髪をいれずに、ユーゴは答える。
「時が過ぎゆく寂しさなんだよな。」
と、遠くを見ながら陣内は答える。
伊坂幸太郎
「兄貴、今すぐ来いよ。母ちゃんあぶねえよ。」と弟から電話があったのは、数分前だった。
母のいる長崎に帰るための準備をしているところだった。
電話の中で、これは危ないかもしれないぞ、と直感で感じていた。
手は動いているのだが、動揺は隠せなかった。
一年前に、親父がなくなった。
急に一人になった寂しさも患ってか、母さんは体をこわしていた。
親父の嫌な記憶がよみがえる。
親父がなくなった日、「危ないかもしれない。」と母から電話があった。
大丈夫だろうと思って、仕事を優先し、その場に居合わせる事が出来なかった。
あの時になぜ、仕事を優先したのか、俺にとって大切なモノは何だったのか。
思い出すだけで、悲しい思いが胸をえぐる。
これから続く、悲しみにはたして俺は耐えれるのか。
上原浩治
今日も朝六時に起き、電車で会社についた。
9時から仕事が始まり、12時20分まで続く。
それから一応の定時である5時に一度休憩が入り、それから残業が10時まで続く。
机に座りながら、そんなルーティーンな生活を考えていた。
その生活に慣れてしまったせいか、何も考える気力がおきない。
「先輩。」と新卒の陣内が声をかけてきた。
彼は今の会社には珍しく、新卒で入社してきた人間だった。
この惰性の日々を知らないのか、いきいきとしている。
「明日夜飲みに行かないですか。」と陣内は、話を続けてきた。
僕自身は、飲みに誘われる事が久しぶりであったため、その言葉が非常に嬉しかった。
勿論、そのような気持ちは表情に出さない。
ここにきてもまだ、プライドを保とうとしている自分が情けなくなる。
「いいよ。明日はちょうど夜のスケジュールが開いているし。」と答える。
「7時半に、ここに集合っす。先輩なんかいい顔してんすね。」と彼は、日時が記載された紙をだしてきた。
パーティグラスという名前の飲み屋らしい。変わった名前である。
仕事が始まるチャイムがなり、仕事に取り掛かる。
THE BACK HORN
「なんだそれ。」と添田が少し興味深けに聞いた。
「なんかさ、俺らは気づいたらもう大学を卒業する。大学に入学したころなんか、こんな時期が来るとは夢にも思わなかった。でも確かに、その時期は目の前に訪れた。」と陣内は、はっきりと答える。
「確かにおっしゃる通りで。」と、野尻駿が相槌を打つ。
「そしてさ、これから、転職、結婚、老い、死、なんてものは確実に目の前に訪れる。そっとだが、急に。なんだかさ、それがすごく悲しいんだ。」と陣内は続けた。
熱がこもっているせいか、声が大きい。
四人以外に、卒業式と思われる学生は他にいない。
遠くで、あっ、マリオのスター状態の人がいるよ。
と怪しげな意味不明な言葉を、小学生ほどの子供が叫んでいるが、誰も気にもとめない。
「意味がわからんがぜよ。」とユーゴは、昔の著名人の真似をして答える。
「でもよ。その過程で手に入れたものもいっぱいあるんじゃないか。」とだしのきいた素麺にマヨネーズをかけながら、添田が答える。
「確かにな。まあ俺自身もよくわからんのだよ。なんだろうな。うまく言葉で表すことが出来ねえんだよな。なんか色々と過ぎていくの早くねえか。高校を卒業したと思ったら、大学まで卒業しちまったよ。気づいたら、あっ、死んでたってなるのかもよ。それは、悲しくねえか。」
ぼそぼそと、食堂名物の酢のきいた唐揚げを食べながら陣内は話し続ける。
伊坂幸太郎
今、俺は、親に小さい頃ほどの幸せを与えれているのか。与えられていないのではないのか。
長崎に帰る新幹線の中で、そんな事を考えていた。
サアワラエワラエホラヨルガアケル、と自分の携帯の着メロがなった。
弟からだった。
「もしも。」と、僕は答えると、「母さんは、ひとまず、今日は大丈夫みたいやけん。」と弟は答えた。
張り詰めていた気持ちが、少しほぐれる。
安堵した気持ちが行動に表れ、持っていたビールを隣の席の人にこぼれてしまった。
「すみません」と謝まった。
「何やってんだよ。」という怒る言葉もなく、ただ「よかですよ。」と隣のおじさんは、少し疲れた表情で答えた。
「それよりも、ロマンは、どこですかねえ。」と彼は意味不明な事を続けてきた。
「おそらく、音楽の中にありますよ。」と僕は持っていたボブ・ディランの詩集を見ながら、咄嗟に答えた。
「そうですか。音楽ですか」と少し安堵した表情をみせ、それから窓を見つめた。
「どうしたんだ。」と弟が聞いてきた。
「大丈夫だ。何もない。それでどうした。」と僕は話を続けた。
「それよりさ、今日、俺の知り合いのライブが住吉であんだけど、来るか。兄貴歌うまかっただろ。」と弟が話を続けた。
「こんな日にか?」と僕は答える。
「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだ。」と誰に訴えるわけでもなく、いや訴えているのだが、独り言のように、ましたてや誰かに教わった言葉であるかのように弟が返答した。
上原浩治
仕事から戻り、今はテレビを見ながら、一人で酒を飲んでいた。
今日も、仕事から帰ってきたのは夜11時。
ゆっくり酒が飲めるのは、金曜である今日のみである。
最近は、なんのために仕事をしているのか、という問いすらも考えないようにしている。
テレビには、お面を被ったバンドが映しだされる。
あれ、これどこかで見たことあるけどなと考えるが、酔っているためか、思考が回らない。
大学を卒業して15年。
転職を三回もやり、まだ結婚もしていない。
待遇は下がる一方で、惰性とも大差ない日々が続く。
この状況を打破するための気力も、今はない。
現状を捨てて困難な道を歩むか、このまま行くのか。
両方を天秤にかけたとき、このまま安住する選択をする自分がいる。
このもやもやした気持ちをどこかで発散したいのだが、打ち明ける友達もいない。
果たして、僕はどこにいるのか、もしかするとこの世に存在していないのではないのか。
とも最近は考えてしまうようになった。
明日は、休日にも関わらず、同窓会の書類を提出しに母校の山口県に行かなければならない。
ああなぜこんな事を、埋もれてたまるかこんな日々に。
と思いつつ、飲んでいた酒が効いてきのか、睡魔に襲われ、そして埋もれる。
THE BACK HORN
卒業式当日。
食堂にいた彼ら5人を含め、サークルのメンバーはアルクというスーパーに集合していた。
「よし。全員集合だ。いつもどおり、12時集合で1時にみんな集まった。」とユーゴは添田をみながら、悪びれるそぶりも見せず答えた。
集まっているサークルのメンバーみんなが笑う。
集合する、という事も、集合時間に遅れる、という事も、このメンバーで、もう当分ないだろうという事を、わかっているのかもしれない。
「さあ行くぞ。」と誰かが声をだす。
「ピンロー!」という何かの合図と思われる言葉が発される。
大学生活でお世話になったノアとミニカに乗り込み、卒業式の会場へ向かう。
伊坂幸太郎
長崎駅についたのは、予定より少し早い、昼の1時だった。
久しぶりの地元は、やはり気持ちがよい。
病院に行くためのバスに乗り込む。
以前残る動揺を隠すために、ipodで音楽をランダムでセットする。
神経を研ぎ澄ます。
9000曲ある曲のなかから、流れてきた曲は、トラック7という曲であった。
ここから病院まで、2時間ある。
適当に流れてくる曲を、詩として書くことを決めた。
上原浩治
朝9時に起き、母校にさきほどついた。気分は重い。
正門は工事中で開いてなかったため、裏門へまわる。
大きな木が両端にそびえ立つ道路をゆく。
肌寒く、雨まで降っている。何もかもが陰鬱に感じる。
こんな時はせめて音楽が必要だ。
そういえば、と酒をこぼした謝礼にと、ipodをなぜかタダでもらった事を思い出した。
かばんから取り出した。少し時代の古いもののようだ。
使い方がわからないため、中央にあるボタンを押した。
曲が流れ始めた。
その刹那、何かが自分の体内を駆け抜けた。
途端、体が動かなくなり、目に涙があふれた。
僕らの時代に有名だったアーティストの、Lonesomeというマイナーな曲が流れてきたのだった。
もう聞くのも何年振りだろう。
僕が大学時代に聞いていた曲だから、おそらく15年前ぐらいだろう。
その一瞬の間に、いくつもの情景が頭をよぎる。
大きな木が両端にそびえ立つこの道で、この学校で、4年間という時間を過ごしてきた事。
あの初々しい日々、もがき続けた日々、大学で始めて出来た友達との思い出、サークルでの仲間との思い出、初めてバイトで出来た先輩との思い出、後輩との思い出、彼女との思い出、勉強にいそしんだ日々、自分が通ったこの道、この光、この風、この風景。
ずっと続く惰性の日々で、色々と忘れていたのかもしれない。
僕は確かに、ここにいる。
走馬灯は駆け抜ける。
あまりにも懐かしい曲が、僕の何かを呼び起こさせた。
たったひとつの曲が、そんな衝動が僕を襲う。
依然として、涙が止まらない。
おそらく、僕は疲れていたのだろう。
THE BACK HORN
会場には、既にたくさんの卒業生が集まっていた。
はたして、この大学生活の4年間で何を身につけれたのか。
ただ、入学時とは違った顔つきが、確かにここにはあった。
彼らは、サークルの集合場所へと向かう。
「なんなんだろうな。」と陣内は閉口をきって、喋りだした。
「現実的にいうと、もう二度と連絡をとらない友達も沢山いるだろう。やはり、合う人と合わない人はいるし、集団では集まるが、1対1では会いにくい人もいる。」
「正直いうとね。」とユーゴは答える。
「まあでもそれでいいと思うんだよね。」と陣内は少し寂しげに、ただはっきりと答えた。
「ただよ、もし何かのきっかけで会うことがあったら、その瞬間、その時間だけでも、過去の共通点ででも話して、楽しみたいよな。」と向かいにいたユーゴは答える。
「その時は、きっと桜が咲いているよ。」と添田はわけのわからない事を言う。
伊坂幸太郎
バスの中で書き連ねた文章を、流れてくるままに書き連ねた。
今の自分を表している言葉なのか、そうではないのか、今は何もわからない。
赤く染まる空 ポッカリと浮かぶ月
どこまで どこまで信じていける
震える その手にあるその思い
胸が震え 涙がこぼれたら
伝えなくちゃいけない
決して振り返ることなく
月の光 夢の花 時計の針を戻す魔法 渡り鳥の歌
そうして 駆け抜けた日々の中に思い出の花が散り
寂しさを抱えたまま また 別々の道をゆく
さて 今日をまた 記憶に変えていけるのか
あれは春という鮮やかな光
悲しみを溶かし また出会えるように
科学者の証明 夜の海 高架線 老いたシーラカンス
何かに屈する時があったのなら
心にたったひとつ消えない その景色を
迷ったそのときには いつでも思い出してくれ
上原浩治
道を行き交う人が、不気味げな目線を、僕にむける。
あっ、マリオのスター状態の人がいるよ。と僕に指をさしている子供もいる。
あの人、今、疲れていた事から開放されて泣いているよ。と、声が聞こえる。
あれ、なんであの子供にはわかるんだと、不審に思いながらも微笑ましくなる。
曲が終わり、偶然にも懐かしい曲がまた流れる。
知っている歌なのだけれでも、注意深く聞いていなかった曲だった。
「長いトンネルをくぐり抜けたとき、見慣れない色に包まれていた。実はまだ始まったばかりだった。どうでもいいとか、そんな言葉で汚れた、心、今放て。」
僕の人生は、惰性の日々が続いている。
何をやったらよいか、どのように生きるのか。
なぜ仕事をしているのかわからないまま過ごしている。
どうなるにしろ、力ある限り生きてゆくのだろうか。
周囲を見渡すと、見たこともない木があった。
あれ、あんな木があったっけ、と思わず口にしてしまった。
前方で自転車をこいでいた学生が、訝しそうな目で、こちらに眼を向ける。
そこには、鮮やかに染まった、ピンクの花びらがついた、木が咲いていた。
ああもうそんな時期かあと思った。
同時に、なんだ、添田、そういうことか。
と、僕は懐かしい日を微かにたどる。
初めて、泣きながら、笑う。
THE BACK HORN
温かい風が、彼らを包み込む。
空は快晴で、とにかく、気持ちがよい。
「まるで、これ、最後の夏の大会みたいだな。」とユーゴが口にだす。
最後の夏の大会とは、多分彼らの高校時代の事をいっているのだろう。
おそらく、最後だけれでも、最後ではない。
何か楽しくて、だけど何かやはり寂しい。
そんな空気を感じとって、ユーゴは口にだしたに違いない。
「そうかもな。」「懐かしいね。」「似ているかもな。」と、懐かしい日を思い出しながら、陣内達は答えた。
「写真とりますよ。」と後ろかろから、後輩のデブミカが声をかけてきた。
「みんなで写真をとるのも、一先ず当分ないのかあ。」と誰かが声を発する。
歯が抜けているのか、はっきりと聞き取る事が出来ない。
彼らが選んだこの道が、よかったかどうかなんて誰にもわからない。
たまたま一緒に同じサークルにはいって、たまたま多くの時間を共有出来た。
たまたま良い仲間をみつけ、たまたま良い時間を過ごすことが出来た。
本当に、何もかも、たまたま、である。
多分、こうして予想も出来ない事が、これからもまた続く。
彼らが次にいつ、集まるのか、集まれるのか、誰にもわからない。
もしかるすと、集合しないのかもしれない。
ただ、将来いつか集合するのだろうな、という予感を漂わせるほど、彼らの集団はあたたかい空気に包まれていた。
「桜を見に行かないか?」
と城山にそう誘われたのは、おとついの事であった。
ギターのチューニングをしながら、一昨日を振り返る。
僕は、引越しのための荷造りをしていたところだった。
「なんでこんな時期にですか?桜も咲いていないですし。」と答えた。
「歌うための準備のためだよ。」と彼は面倒くさそうに答える。
桜を見に行くとは、そういうことか、と考える。
「他のやつらにも言ってるからな。後、し明後日、お前らの親父の命日だろ。お前がいつもいってるじゃないか。」と彼は返答した。
「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだ。」と、城山と僕が同時に声に出した。
「よし行こう。」
とユーゴがいきなり声をかけてきて、我が身に戻った。
周囲を見渡すと、もう既に準備が出来ている様子だった。
そういえば、このメンバーでバンドを組むなんてことは、あの卒業式とあの惰性の日々からは、想像出来なかった。
陣内と、あの変な名前の飲み屋に行かなければ、こんな事はなかっただろう。
まさに偶然だ。
多分、こうして予想も出来ない事が、これからもまた続くのだろう。
「おい行くぞ。」
と陣内が声をかけてきた。
先陣をきって、お面をつけた陣内がステージ上にのぼる。
つづいて、ステージに足を踏み入れる。
客席を見渡すと、結構な人数のお客さんがいるのが見える。
先輩と後輩と思しき人、兄弟と思しき人、年配の方。
このライブハウスのなかにも、色々な人がいるのだろう。
色々な人がいて、色々な思いがあるのだろう。
会場の中に、「ロマンは見つかりましたか?」というプラカードを持っている二人組が見えた。
僕は、笑わずにはいられない。
なんでいるんだ、と疑問に思いつつも微笑ましくも、少し前に見つかりましたよ。
仰ったとおりに。と、心の中で答える。
そうですか、それはよかった。
と、どこかで聞いた事がある声が聞こえたので、驚かずにはいられない。
なんだよ、今日は何が起こってんだよ。
ドラムが合図を始める。
歓声が怒涛のように会場に木霊する。
時計を見ると予定開始時刻を少しすぎている。
グループで来ている人もいれば一人で来ている人もいる。
日常とは違う雰囲気をそれぞれ味わっている。
赤や青のライトは興奮させる雰囲気をかもしだし、香水にも似た心地よい匂いは会場を包みこむ。
僕は、この雰囲気にただならぬ高揚をおぼえた。
みんな今か今かと始まるのをまちかまえている。
会場のライトが消えた。ライブハウスは一瞬にして闇につつまれる。
ざわめいていた観衆の「ごくり」と唾をのむ音が聞こえてくるほど、一斉に会場は静まりかえっている。
自分の鼓動が高鳴るのがはっきりとわかる。
ユーゴが先陣をきって演奏を始める。
同時に津波のような歓声がライブハウスをおおいつくす。
僕を含め会場の全員が異次元へと向かう。
かっかっか。
ばちの音を合図にユーゴがまた動き出す。
ぎゅん ぎゅん という独特の音が会場の空気を一瞬にしてのみこむ。
ライトが一斉に中央に集まり、ロックにふさわしい魅力的な声がかもし出される。
体の芯に刻まれる声だ。
自分の体がぶるっと震えるのがわかった。
僕は、会場を見渡す。
この会場には、改め、多くの人がいるのだろう。
卒業式を終えた人たち、迎える人たち、親父を亡くした人、兄弟と来ている人、親と来ている人、能力のある人、お面を被った僕達。
その一人一人に、色々な感情や、叫びや、思いがある。
楽しい思いもあれば、悲しい思いも、切なさも、腹立たしさも、懐かしさも。
全部ひっくるめて、たくさんの思いがここにはある。
曲は、最初のサビを終える。
その思いの伝え方は、人それぞれなのかもしれない。
言葉かも、歌、絵、物、眼差し、背中、とっさに出る一言かもしれない。
伝え方はどうにしろ、そんな色々な思いを、俺はこれから感じることが出来たらと思う。
俺のこの思いも、何かしら伝わっていたらと思う。
曲が、最後のサビに入りかかる。
ライブハウスには、ユーゴ、城山、陣内、鼻尻、添田、会場全体で、同じセリフが響き渡る。
ただ、同じセリフでも、確かに意味は異なる。
染まれ。
その想いよ。
解き放て。
その衝動よ。
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