流れるままに書く。
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寝ようとしていた頃にラインがきた。
「連絡が遅くなりましたが同期トップになりました!」
後輩からの、何気ない連絡だった。
そして、今でも忘れない出来事を思い出した。
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東京で行われた会議から新幹線で名古屋に戻っていた。
翌日の面談の準備を忘れていたため、疲れを感じながらも、営業所にむかった。
エレベーターで上り、フロアにむかった。
前日からの緊張とハードなスケジュールで疲労が溜まっているから、営業所には誰もいないだろうと、直帰しているだろうと、誰もいないはずの部屋のセキュリティロックを外した。
ごく自然に、椅子に座る、彼がいた。
当時は自分にも勢いがあった。
勢いがあるというよりも、自分にも誰にも負けたくないと働いていた日々に、密かに自負心みたいなものを抱いていた。
それだけに、彼の姿を見て、
こいつにはかなわねえなあと、素直に感心し、認めた。
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連絡すべきかどうか迷っていた。
どう連絡すべきかどうか考えていた。
直接伝えるタイミングもなければ、直接伝える必要も特にないと思っていた。
それほど重要なことではないと思っていた。
1年間一緒にいて、遊びに行ったこともなければ、直接力を貸したこともなければ、何かを直接教えたこともなければ、プロジェクトを一緒に達成したこともなかった。
お手本の先輩には到底遠かった。
廊下を何度も行き来しながら、考えた挙句、簡単に、軽く、ただ、皆に伝える前には直接伝えたほうがいいと思い、電話をかけた。
ぷるぷると電話はなり続け、留守電を残した。
「おれ、今月で退職する。」
数分後、先輩から携帯宛にメールが届いた。
「戻りの新幹線で泣いているから、フォローしてくれ。」
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今、後輩から届いたラインを既読出来ずにいる。
後輩の力を素直に認めて称える気持ちと嬉しさと、今の状況をまっすぐ受け入れられていない自分と心に残る悔しさと、自分にとって何が大事なのかよくわからなくなるときがあるけれど、おい、お前はわかっているんじゃないかという反省の繰り返しと。
かなり遠回しに伝えるとする。
前もこれからもお前には頭が上がらねー。
教えられてばっかりです。
1年お疲れ様。
ありがたい男、後輩の井上。
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