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2017年9月21日木曜日

読書感想文「永遠の出口」(本屋大賞4番)

【本の概要】
題名:永遠の出口
著者:森 絵都
発行:2003年
リンク:アマゾンWikipedia

内容1:(参考:アマゾン)
「私は、“永遠”という響きにめっぽう弱い子供だった。」誕生日会をめぐる小さな事件。黒魔女のように恐ろしい担任との闘い。ぐれかかった中学時代。バイト料で買った苺のケーキ。こてんぱんにくだけちった高校での初恋…。どこにでもいる普通の少女、紀子。小学三年から高校三年までの九年間を、七十年代、八十年代のエッセンスをちりばめて描いたベストセラー。


【評価】
①読みやすさ :難しい言葉や内容はなく読みやすいです。
②キャラクター:1人1人の描写は少ないものの、登場人物との絡みは面白いです。
③言葉/文体 :言葉にしにくい感情をとても上手く表現しております。
④どんでん返し:特にありません。
⑤読後感   :小さい頃、どんなことを感じて考えていたのだろうとしんみりとします。
⑥好み    :平凡だけど平凡ではない日常をテーマにしているところが面白い。


【私の感想】
個人的にはとても面白かったです。気づいたら過ぎていく過去の日々を、今の日常を、的確で、多彩な言葉で表現しており、さて、どんな人生を自分は送ってきたんだろうと振り返りたい気持ちにさせられました。

また、文中に「もっとちゃんと思い出さなきゃ駄目だよ」という言葉に、ハッとさせられました。今、私達が過ごしている日常は前に向かって進んでいて、手に入れたいものは、これから先にあるような気がしますが、もしかすると、手に入れたかったものは過去にあるんじゃないか?前にむかって頑張ろうとするけど、後ろにむかって頑張ろうとしたことはあるのか?と思ったからでございます。積極的に過去の出来事を探しだすっていいなあと思います。


【気になった点】
1、全体のボリュームがもっと多くてよかったと思いました。

2、高校生でのバイトであるとか、中学生での思春期であるとか、私は経験したことがなかったので、入り込むことは出来ませんでした。

3、最後の「私は元気だ。まだ先へすすめるし、燃料も尽きていない」は、いっけん、いい言葉に思えるし、心が明るくなれるけど、それまでの流れ、キャラクターの設定、本の方向性からいうと、少し違和感を感じた。



【かっこいい表現や言葉】
P29 風も、地面も、すべてが私をそこに運んで行く気がした。

P63 トリに限らず、男子というのは私達女子のうかがいしれないところで何かを決意し、長い眠りに入ったりする生き物だった気がする。それまでに仲が良かった友達と急に距離をおいたり、いきなり勉強に専念しだしたり。そのたびに、私達女子はおろおろと動揺し、いったい何が起きたのだとお節介な心配をしたものだ。

P111 それから長い年月が流れて、私達がもっと大きくなり、分刻みにころころと変わる期限に振り回されることもなくなったあの頃、別れとはこんなにも寂しいだけじゃなく、もっと抑制のきいた、加工された虚しさや切なさにすりかわっていた。どんなに辛い別れでもいつかは乗り切れるとわかっている虚しさ。決して忘れないと約束した相手もいつかは忘れると知っている切なさ。多くの別離をへるごとに、人はその瞬間よりもむしろ遠い未来を見据えて別れを痛むようになる。

P319 もっとちゃんと思い出さなきゃ駄目だよ

p346 どんな未来でもありえたのだと、今は思う。


【こんな人におすすめ】
1、一度立ち止まりたい人、過去を振り返りたい人
2、言葉にしたいけど言葉にできない感情を持つ人
3、普通の日常が好きな人

【時間】
本を読むために必要な時間:2h
この書評へ投資した時間:40m

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。本屋大賞の他の感想はこちらのスプレッドシートからご確認ください。「読書リスト

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