この本は、10章からなる。第1章から第4章は、文章を書く上で非常に重要な「修飾の順序」「句読点のうちから」について記載。6章は、助詞について。8章は、駄目な文章例。9章は、文章のリズムについて。
「要約」
P10
この本で重要視していることは、読む側にとってわかりやすい文章を書くこと。
P11
話すように書くことも、見たとおりに書くことも、おかしい。
P18
日本語をハッキリ客体として意識しなければならない。文章を書くというのは、日本語を外国語として取り扱わなければならない(清水幾太郎氏の引用)。
P71
修飾の順序
原則1 節を先に、句を後に
原則2 長い修飾語ほど先に、短いほど後に
原則3 大状況・重要なほど先に
原則4 親和度・なじみの強弱による配置転換
原則1 節を先に、句を後に
1番読みやすいのは?
白い横線の引かれた厚手の紙
厚手の横線の引かれた白い紙
白い厚手の横線の引かれた紙
横線の引かれた白い厚手の紙
横線の引かれた厚手の白い紙
厚手の白い横線の引かれた紙
3と4番目。なぜなら、節が先で、句が後だから。
原則2 長い修飾語ほど先に、短いほど後に
1番読みやすいのは?
Aが私が震えるほど大嫌いなBを私の親友のCに紹介した。
Aが私の親友のCに私が震えるほど大嫌いなBを紹介した。
私が震えるほど大嫌いなBをAが私の親友のCに紹介した。
私が震えるほど大嫌いなBを私の親友のCにAが紹介した。
私の親友のCにAが私が震えるほど大嫌いなBを紹介した。
私の親友のCに私が震えるほど大嫌いなBをAが紹介した。
4番目。なぜなら、長い修飾語は前に、短い修飾語は後に。
原則3 大状況・重要なほど先に
1番読みやすいのは?
太郎さんがナイフで薬指にけがをした。
太郎さんが薬指にナイフでけがをした。
ナイフで薬指に太郎さんがけがをした。
薬指にナイフで太郎さんがけがをした。
ナイフで太郎さんが薬指にけがをした。
薬指に太郎さんがナイフでけがをした。
1番目と2番目。なぜなら、大状況から少状況へ、重大なものから重大でないものへ。
1番読みやすいのは?
初夏の雨がもえる若葉に豊かな潤いを与えた。
初夏の雨が豊かな潤いをもえる若葉に与えた。
もえる若葉に初夏の雨が豊かな潤いを与えた。
もえる若葉に豊かな潤いを初夏の雨が与えた。
豊かな潤いを初夏の雨がもえる若葉に与えた。
豊かな潤いをもえる若葉に初夏の雨が与えた。
1番目。なぜなら、大状況から少状況へ、重大なものから重大でないものへ。
原則4 親和度・なじみの強弱による配置転換
次の文章を改良してみよう。
問題→チリ美人は、アルゼンチンの肉をたっぷり食べているセニョリータにくらべると、ぐっと小柄である。
答え→肉をたっぷり食べているアルゼンチンのセニョリータに比べると、チリ美人はぐっと小柄である。
P85
句読点の第1の原則「長い修飾語が2つ以上あるとき、どの境界に点を打つ」
例1
病名が心筋梗塞だと元気に任せて過労を重ねたのではないかと思う
A 病名が心筋梗塞だと、元気に任せて過労を重ねたのではないかと思う(ここでの修飾語は、「病名が心筋梗塞だと」と「元気に任せて過労を重ねたのではないかと」)
例2
戦前からの業界の流れを知る幹部も、若手も、今年の漁獲について聞くとうしろめたそうな顔になった。
A 戦前からの業界の流れを知る幹部も、昔のことは何も知らない若手も、今年の漁獲について聞くとうしろめたそうな顔になった。(戦前からの業界の流れを知る幹部も若手も、とした場合、若手も、戦前からの業界の流れを知っていることになってしまう)
P89
句読点の第2の原則「語順が逆の場合に点を打つ」
例1
わたしをつかまえて来て、拷問にかけたときの連中の1人である、特高警察のミンが、大声で言った。
A わたしをつかまえて来て拷問にかけたときの連中の1人である特高警察のミンが、大声で言った。or特高警察の、わたしをつかまえて来て拷問にかけたときの連中の1人であるミンが、大声で言った。
例2
渡辺刑事は、血まみれになって逃げ出した族を追いかけた。
これは、「追いかけた」という述語に「渡辺刑事は」「血まみれになって逃げ出した族を」のうち、短い方を先にしている(修飾の原理で、本来は逆であるべき)。なので「、」を入れなければならない。
P115
修飾とコンマの原則を考慮に入れた上で、次の文章を読みやすくするためには、どうしたらよいか?ちなみに、この文章は、「人間的な感動」が必要だということを伝えたい。
例1
「私は人間的な感動が基底に無くて、風景を美しいと見ることは有り得ないと信じている。」
A「人間的な感動が基底に無くて、風景を美しいと見ることは有り得ないと私は信じている。」
P93
著者がオススメする、「テンとマルの良い使い方」の例文。
6月4日の夕方、わたしたちはパキスタンとアフガニスタンの国境線に到着した。国境は、ひろびろとした大平原の真ん中にあった。地平線から横なぐりにかっと照りつける夕日をあびて、われわれの二台の車は、のろのろとアフガニスタン領にすべりこんだ。すぐ看視所につく。わたしたちは、旅券を見せる。
P199
次の文章のどこがおかしいか。
例1
只野小葉さん。当年55歳になる家の前のおばさんである。このおばさんは、ただのおばさんではない。ひとたびキャラバンシューズをはき、リュックを背負い、頭に登山帽をのせると、どうしてどうしてそんじょそこらの若者は足元にも及ばない。
そして、この只野さんには同好の士が3、4人いるが、いずれも50歳をはるかに過ぎた古き若者ばかりなのである。マイカーが普及し、とみに足の弱くなった今の若者らにとって学ぶところ大である。子供がもう少し手がかからなくなったら弟子入りをして、彼女の上に年齢とは逆に若々しい日々を過ごしたいと思っている昨今である。
筆者の感想
一言でいうと、これはヘドが出そうな文章の一例。あまりにも紋切り型の表現で充満しているから。手垢のついた、いやみったらしい表現。「このおばさんは、ただのおばさんではない。」と助詞を省くと、文自体に「笑い」を出してしまう。落語家が自分で笑っては、観客は笑わない。「3、4人いるが、」という不明確な「ガ」を使っている。
P204
スミレの花を見ると、「可憐だ」と私たちは感ずる。それはそういう感じ方の通年があるからである。
しかしほんとうは私は、スミレの黒ずんだような紫色の花を見たとき、何か不吉な不安な気持ちを抱くのである。しかし、その一瞬後には、私は常識に負けて、その花を「可憐」なのだ、と思い込んでしまう。文章に書くときに、可憐だと書きたい衝動を感ずる。
たいていの人は、この通念化の衝動に負けてしまって、スミレというとすぐ可憐なという形容詞をつけてしまう。このときの一瞬間の印象を正確につかまえることが、文章の表現の勝負の決定するところだ、と私は思っている。この一瞬間に私を動かした小さな紫色の花の不吉な感じを、通念に踏みつけられる前に救い上げて自分のものにしなければならないのである。(伊藤整氏)
P213
おもしろいと読者が思うのは、描かれている内容自体がおもしろいときであって、書く人がいかにおもしおかしく思っているかを知って面白がるのではない。その風景を筆者が美しいと感じた素材そのものを、読者もまた追体験できるように再現するのでなければならない。
P207とP221
次の文章のどこがおかしいか。
例1
三井造船には、構内協力企業が16社あった。そのうち14社で協同組合を作っていて、半分が地元だということであった。千葉造船所の新設で、社員の多くは岡山県の玉野造船所から移ってきたが、協力企業も一緒に行動するらしかった。
解説→この文章での過去形は、「私は今その場にいないで、帰ってきて机の上で書いている」という真相構造が存在し、「机の上で書いています」と告白していることになる。
例2
北部ラオス、ジュール平原の南西に位置する政府軍の最前線基地ロマンチェは、砲声と爆音に包まれていた。
解説→この文章では「私が取材したときは、・・・包まれていた。今はその現場を去って、机の上で書いている」と、わざわざ告白している。今もまだ進行中であるなら、「砲声と爆音に包まれている」となる。
例3
カンダハールを出て三日目の昼過ぎ、わたしたちはカーブルに着き、江商商会のバンガローにやっかいになる。加古藤さん、内田さんという二人の社員には、徹底的にお世話になった。ここで、ペシャワール方面から超えてくるはずの、岩村、岡崎両氏の到着を待つ。
解説→読者は、筆者と一体になって舞台を同時進行するかのようだ。
「意見」
この本は、久しぶりに食らいつくように読んだ。なぜなら、内容がとにかく面白い。
まず、修飾の順序について、この本では、第2・3章の47ページを使って説明をしている。修飾の順番を考えたこともない私にとって、ただ、驚きだ。
文章をよく書き、本をよく読むと、どのように修飾したらよいか、何がおかしいか、ある程度理解出来る。ただ、それは感覚的なものである。そうであるぶん、どこがで修飾ミスをする可能性がある。それなら、法則や原理を知ってなお、ミスを減らせたらよいのではないか。
いや、法則や原理など言わなくとも「文章・言葉」に興味がある人にとっては面白いだろう。
次に、「、」について。上記と同じく、「、」について私は考えたことがなかった。後は、P204の伊藤整氏の発言にも惚れ惚れする。んー、ここで言わんとすることと、以前に書いた日記が似ているのは気のせいやろか。「ヘッドフォンチルドレン」
最後に、この本を読んでいて思った全体的な感想は、読みやすい・理解しやすいということ。なんでやろか?例文を用いて説明をしていてるためか、やはり書き方が上手いのか。どっちにしろ、この本の文章を読めば、内容どうこう書きやすい文章を学ぶ手がかりになる。
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